kaunisupuu mekiss

小さなお話や長いお話、詩のようなお話、時々他にも何か。

犬のぬいぐるみ2

 小さな冷たい手を握りながら、街路樹の根元やこの子の歩いてきた道を眺める。犬のぬいぐるみなんて、そうそう落ちているものではない。ということは、落ちていたら目立つはずだ。簡単な探し物だ。この子の来た道を辿ればどこかに落ちているだろう。進行方向からくる人に聞いても良いのかもしれない、犬のぬいぐるみをみませんでしたか?と。しかし、すれ違う人たちはコートの襟元を押さえてそれぞれ急ぎ足で過ぎていき、話しかけるすきもない。2人してキョロキョロ見回しながら歩いていくが、一向にそれらしいものは見当たらない。通りのビルを太陽が山吹色に照らし始めている。繋いだ手もだいぶ温まってきている。ふと、わたしは思った、小さな子を拾ったがこれは交番に届けなくてはいけない?のではないか、と。迷子みたいです、と、交番に届けた方が良いのではないか?と言っても今いるあたりに交番は見つからない。この通りの交番は、まだまだ先か、またはずっと後ろにあるのだ。

「そのぬいぐるみの大きさは、どれくらい?」

女の子はつないだ手をパッと話して両の手のひらを拍手する寸前くらいで手を止めて、ちいさく、んっと言った。わたしも、ん?とこたえる。しかしこれはかなり小さい、小さすぎるよね?も少し大きいよね?聞いておきながら自問自答する。

「とっても大事なんだね、犬のぬいぐるみ」

女の子は答えない。長々歩いているがぬいぐるみも見当たらない。次第に暮れていく歩道を二人で手を繋いで歩いていく。先ほどまで灯っていなかった看板に灯りが灯る。心なしか車の量も増えてきたように思う。不意に風がコートの裾を翻しあたりが冷えてきたように感じた。女の子に来た道を案内されながらどこかでこの子を待っている犬のぬいぐるみを探している。とうとう公園に着いた。

「ここであそんでいたの?」

二つのブランコに、滑り台が一つ。あとは砂場と申し訳程度に整えられた水飲み。そんなに広くない公園で、はぐれた友達を見つけるのも時間のものだろう。