kaunisupuu mekiss

小さなお話や長いお話、詩のようなお話、時々他にも何か。

2019-02-01から1ヶ月間の記事一覧

第2話-① 起 血縁を捨てる ~磐牙~

生まれて三日ばかり過ぎた細い月が高い空の上で白く輝きを放っている。命を駆るためだけに振り上げられた鎌の切っ先に似た細い月の―鋭い輝きが暗い森をところどころ突き刺すように照らしていた。「磐(ばん)牙(が)、まったくお前ときたら砂のようじゃ。この手…

天使の瞳 小さい話②

彼は人が苦手だ。けれど街の人混みは好きだ。特にこの街の人混みは、彼を気にしない。彼に違和感を覚える人もいなければ目を止める人もない。だから、この街の人混みにいると、寄る辺ないけれど、一人ぼっちではない気がする。人の中にいて、誰にも気にかけ…