犬のぬいぐるみ1
小さな女の子を拾った。
掃き集められた山盛りの黄色いいちょうの上にかがんで、なにかさがしているようだった。
どこかでみたことがあるように思えて、無視することができず。私は声をかけてしまった。しかし、その子は私に振り向きもせずに「犬のぬいぐるみを探しているの」とだけ小さい声で言った。
落ち葉をかき分ける度、あたりが一瞬だけ黄色に染まる。よほど大切なもののようであたり構わず巻き散らかしているように見えた。そんなに広くない歩道を様々な人が通りゆく。なぜか私となも知らぬ小さい女の子とを交互に見、訝しげに急ぎ通り過ぎていく。確かに、側から見たら私たちは歳の離れた姉妹のように見えるのだろう。
「ない」
おもむろに立ち上がり、私を見上げる瞳から涙が溢れ出す。
「犬のぬいぐるみがないの」
私は彼女に視線を合わせるためにしゃがみ、顔を覗き込む。まん丸のほっぺは真っ赤で、小さな顎の線に沿って真っ直ぐに切りそろえられたおかっぱの髪。なんでこんな小さな子が1人でいるのだろうと辺りを見回す。おかあさんとか、お父さんとか、いるんじゃないかと。しかし、それらしき人は見当たらない。
「犬のぬいぐるみがないの」
思わず手を取ると、ずいぶん長い時間そとにいたらしく氷のように冷たい。思わず手を引っ込めようとしたがぎゅっと縋るように握り返された手は離せない。その必死な様子に思わず
「どこを歩いてきたの?一緒に探してあげるよ。」と言っていた。
黙ったまま頷く小さな頭をみて不憫に思えてしまった。それで2人して歩道を歩き始めた。