kaunisupuu mekiss

小さなお話や長いお話、詩のようなお話、時々他にも何か。

その日父は。4

 姪の駒子は紆余曲折あったが事務所を経営している。うちの長女と同じ歳だが、えらい差だ。うちのは、あれは大きな歳になって急に家出だ。

どこでどう間違えたのか。ってうか、そもそも家出って、若い子がするもんだろう。旦那をうちに置いてって言うのも変だろう。婿をどうすんだよ。あぁ、うちのことを考えていくと、だんだん頭痛くなる。それに比べたら駒子のうちは、とりあえず片付けたらキレイになる(たとえ翌日元通りになったとしても)し、事務所に来る人たちもみないい人達だし、駒子の息子もサッカー少年らしく楽しいし。長女のむすこはこれまた、何考えているかさっぱりわからないや。小さいときいっしょにザリガニとりにいったり伊豆までヤドカリ取りに行ったりあいつはよろこんでいたなぁ。どうせあいつは自分の息子に仕送りなんざぁやっちゃいないだろう、おりゃあ孫のためにも駒子んとこで使ってもらわないといかん。あと2年であいつも卒業だからな、それまでは、頑張らなきゃならん。

「ゴミはこれだけか?事務所のほうにはあるのか?ない?わかった。ちょっくらごみをすててくらぁ。」

ゴミを出しに行くといつものご婦人方がいる。挨拶をして顔を上げると俺より少し年上の白髪頭のおばあちゃんが足を引き摺ってゴミを持ってくる。あれはまさに、えっちらおっちらって言うやつ。俺は駆け寄ってゴミを受け取る。

どうせ出すんだから幾つ出すのもいっしょだ。

優しいとか言われるが、困ってる人がいたら手を差し伸ばす、当たり前だろう。

「いつもすまないねぇ。助かるよ。」

俺はうなづく。みんながみんな少しずつ周りの人を気遣えば世の中案外うまく回るはずだと俺は思っている。