kaunisupuu mekiss

小さなお話や長いお話、詩のようなお話、時々他にも何か。

その日父は。2

読経が終わるころ、お母さんが起きてくる。よかった、今日は朗らかだ。ここのところお母さんの機嫌が良くなかった。ねえちゃん家に行くのを年を理由にそろそろやめたら⁈という。だが辞めたら孫にお小遣いも渡せなくなるし何より、1日をどう過ごしたら良いかわからないじゃないか、と思う。確かにやることはたくさんある。後回しにしていることもかなりあるが。家の中のことをしてくれと、お母さんは言う。でも、家の中のことをしても駄賃は発生しないのだぞ、むしろ出費になるだろう。心の中で反論するが、自分の生活のローテーションは変える気はない。お母さんは、新しいものや、なんだか見たことがない食べ物を食べてみたいと言う。俺は別にと思う。あんまりにも複雑な味の食べ物はそもそも複雑すぎて、何を食べているかわからないじゃないか。一緒に出かけようと言うけど、それだって出費になる。それに足が痛いからあんまり長く歩きたくないし、

良くわからないところは良くわからないからあまり行きたかない、と言ったら、むくれられた。お父さんはいつもそう、そうやって姉さん家ばかり行ってうんぬん。もう、おこりだしたらしばらくはあのままだ。帰りにチョコレート買ってこよう。

「お母さん、おはよう」

「おはよう、お父さん。ぴいちゃんに起こされたの?まあ、ぴいちゃんはごはんもらったの。よかったね。今すぐご飯作るね。」

頷いて食卓に座る。新聞を開いてテレビのスイッチを入れる。そうか、バカに静かだったのはテレビがついていなかったからか、と思う。テレビの中でいつものお天気お姉さんが今日の予報中である。お姉さんが地域を指す棒を中部地方にあてて天気をリポートすると猫がテレビに飛びつく。テレビが揺れる、面白い。しかし、液晶テレビの画面に傷でもついて買い替えとなったら俺の稼ぎがあった方が絶対良いだろう、とおもいながら、ガスレンジで格闘中の妻に視線を送る。俺にはお構いなしでお母さんは卵焼きを作っているようだ。

しばらくするとたまごやきに、良く煮詰まった豆腐の味噌汁、生野菜に、胡瓜の漬物、納豆、ご飯が出てきた。今日もたくさんだなあ、と思っていると、お母さんはパンに納豆を載せてトースターに入れて5分セットした。それから、なんでも勝手にコーヒーを淹れてくれるマシンにカップをセットした。トースターがチンとなるころ俺は食べ終わり洗面所に行く。顔を洗って、歯を磨き、トイレの時間だ。トイレには本を持って行く。そうきまっているからだ。