kaunisupuu mekiss

小さなお話や長いお話、詩のようなお話、時々他にも何か。

犬のぬいぐるみ7

わたしはあの子がこのうちに入ったのを見たはず。見たような気がする。このうちだったような。ほんとにそうかしら?入ったのであれば、中に誰か居て居留守を使っているの?なんの理由で?門の前には相変わらず軽自動車が停まっている。もう一度玄関に立ち呼び鈴に指を当て、強く押す。

「はーい。はい、はい。」

足音に加えだんだん声が近づいてきた。一体全体、このうちの人はのんびりしすぎではないか。真冬にあんな小さな子が外にいても気づかないとか、送り届けてくれた相手に対してお礼の言葉ひとつない。お礼が欲しいわけじゃないけど、わたしはそれなりに誠心誠意つくしたのではないか。

あれやこれやと考えを巡らしているうちに、ガラリと引き戸が開いた。相手が何か、いう前にわたしが先に口火を切った。

「あの、先程、女の子を連れてきたんですが」

対応に出てきた女は髪を後ろにまとめ、私を訝しげに眺めている。それから、この人は何を言っているのかというふうにわたしの瞳をみつめてきた。

「えっと、小さい子。犬のぬいぐるみを探して落ち葉の上にいたので、一緒に探しました。でも、見つからないうちに日が落ちてしまったので、お宅まで送ってきたのですけど」

彼女はなおも私を見つめている。夜風に当たりすぎたせいか、自分の声が枯れ気味に聞こえた。胸の辺りが急にひゅうひゅう言う。