kaunisupuu mekiss

小さなお話や長いお話、詩のようなお話、時々他にも何か。

つぎ、降ります。12月20日

 朝バス停に並びバスを待っている時、ふいにはらはらとイチョウの葉が降ってきた。風に吹かれて落ちると言うよりもむしろ誰かに揺らされて落ちてくる感じだったから、見上げてみるとカラスが一羽枝にいた。おそらく慎重に細い枝の上を移動しているのだが、ちょんと動きカァとなく度イチョウはハラハラと舞い落ちた。カラスの視線の先には雲ひとつないやわらかなみずいろの空が広がる。何かを思い出して微かに口角を上げて微笑むように、まだ夢の続きの中にいるような細い月がある。この冬初めて手袋をはめて家を出てから10分も経っていない。カラスは相変わらずカアと鳴いてはイチョウを散らしている。

 定時になってもバスは来なかった。歩道に並んでいる人は腕時計と交互に道路を覗き込む。わたしも青梅街道を覗き込む。通勤のラッシュ時、次々現れる高級外車の先、バスに代わって銀鼠色の軽トラがあらわれたた。

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